今回は「分詞構文」というものについて見ていきましょう。「分詞構文」という名前だけ見るとかなり難しそうですね。「分詞」だけでも面倒なのに「構文」なんて大嫌いな人も多いかと思います。でも実は、分詞構文は英文を短くできる方法なのです。1つ1つ手順をふめば確実に分詞構文が使いこなせるようになりますので、苦手意識を最初から持つのは損です。
分詞構文を学ぶには、まず「節」という考え方をきちんと理解しておく必要があります。
Because I want to be a doctor, I study hard every day.
という英文ならば、主語の I が2回登場しているのに気付きますね。I want to be a doctor の方には Because という接続詞も付いています。
主語 + 動詞が1セットで1つの節となっており、この英文の場合は2つの節でできていることになります。
さらにそれぞれの節には名前がついていて、主語の I の前に接続詞が何も付いていない I study hard every day の方の節を「主節」、Because で始まる方の節を「副詞節」と呼びます。「副詞節」は「従属節」とも呼びます。
「副詞節」より「従属節」の方がわかりやすいかもしれません。「主従関係」という考え方がぴったりはまるからです。
つまりこの英文では I study hard every day の節がご主人様、Because I want to be a doctor の節が従者です。
「私は毎日一生懸命勉強します」だけで十分に独立した文として成り立っていますが、「私は医者になりたいので」というのは単独の文として十分とは言えません。
Because I want to be a doctor. だけで文として通じるのは、その直前に Why 〜? と聞かれた場合の答えとしてのみです。実はここも間違えて使ってしまっている人が多いので、この機会に覚えておいてください。
話を戻すと、この英文における
Because I want to be a doctor というのは I study hard every day の理由を付け加える補助的な存在なのです。
because「〜なので」、when「〜する時」、if「もし〜ならば」のように主節を修飾する意味で使う接続詞を「従属接続詞」と呼んでいます。おや、ここでも「従属」という言葉が出てきたので、やはり「副詞節」より「従属節」のほうがわかりやすいですよね。ただし「副詞節」だけでとおしている教材も多くあるので、「従属節」だけでなく「副詞節」という呼び方もしっかり覚えておいてください。
主節と副詞節(従属節)は
I study every day because I want to be a doctor.
のように前後を入れ替えても使えます。
副詞節(従属節)を後ろに置く場合はカンマ(,)は不要です。
さて、お待たせしました。主節と副詞節(従属節)の関係が理解できたところで分詞構文の作り方に入っていきましょう。
まず
When I visited Osaka, I met an old friend.
という文があります。これを分詞構文に書き直すにはどうすればいいのでしょうか。
ここで、主節と副詞節の見分けが必要になってきます。カンマで区切られた2つの節のどちらが主節でどちらが副詞節なのでしょうか。
そうですね、従属接続詞 when のある方です。分詞構文にするには、こちらの副詞節をいじっていくことになります。
手順ですが
① 接続詞の when を省略
② 主語の I が主節の主語と同じなのか見極める。この例文では I と I なのでわかりやすいのですが、副詞節は she で主節は my mother となっていて同一人物というようなパターンもありますので、しっかり確認します。同じなら主語は省略します。主語が主節と副詞節で違っていたら省略しませんが、そのパターンは「独立分詞構文」として別の機会に紹介します。
③ 動詞を〜ingの形にする。visited が過去形であることはここでは気にせず visiting でOKです。
これでできる分詞構文が
Visiting Osaka, I met an old friend. です。短くスッキリとまとまりましたね。分詞構文は書き言葉でよく使われる形です。
ひとつ気になるのが「when がなくなったのに、読んで瞬時に『大阪を訪れたとき』とわかるのだろうか」ということです。
文章の中で登場した場合は、話の流れや前後の文との関係でたいてい理解できると思います。
迷うのはテストで「この分詞構文を和訳しなさい」「この分詞構文を接続詞のある文に書き直しなさい」といった具合で、単独の英文として出題されたときです。
副詞節がいつも when で始まっているわけではありませんから、訳し方に迷うこともあります。省略された接続詞を because ととらえて「大阪を訪れたので、古い友人と会った」という和訳を書いてあっても、一応通じますので、私が採点者なら✕にはできません。しかし出題者が「答えはこれ1つだけ」と決めて採点基準を作成していることもあります。完璧を目指すなら、分詞構文にたくさん触れて「最も自然な」解答ができる技術を身につけることも必要になります。
ここからは分詞構文にできる英文のパターンを分類して見ていきます。
1つ目は when(〜する時), as soon as(〜するとすぐ) などの「時を表す接続詞」がある場合です。
As soon as he heard the chimes, he stood up.
なら
① 接続詞 As soon as を省略
② 主語の he も主節と同じなので省略
③ 動詞の heard を hearing に変える
これだけで分詞構文にできますね。
2つ目は because, since, as などの「理由を表す接続詞」がある場合です。
Because he felt tired, he took a rest.
なら
① 接続詞 Because を省略
② 主語の he も主節と同じなので省略
③ 動詞の felt を feeling に変える
これで完了です。
3つ目は while「~しながら」で同時性を表している文です。
He studied English while he was listening to the radio.
なら
① 接続詞 while を省略
② 主語の he も主節と同じなので省略
③ 動詞の was listening を listening に変える(be動詞の was を省略)
これで完了です。
動詞は進行形でも過去形でも基本的に「~ing」となります。
3つ目は and で「~して…」のように連続性を表している文です。
実はこのパターンは「主節」「副詞節(従属節)」という考え方からは外れています。and は「従属接続詞」ではなく「等位接続詞」なのです。
「従属接続詞」で導かれた副詞節(従属節)は主節を修飾する役割にあると言いましたが、「等位接続詞」はその名の通り同等の文の成分をつなぐ役割なのです。
The bus starts at three and arrives in Tokyo at five.
という文なら starts at three と arrives in Tokyo at five はどちらも「〇時に△△する」という動作を表していて、and で「AしてB」とつないだだけです。
だからといって分詞構文にするのに特別な手順があるというわけではなく
① 接続詞 andを省略
② 主語はもともと and の後ろにはついていないので省略する必要はありません。starts at three と arrives in Tokyo at five のどちらも the bus が行う動作です。
③ 動詞の arrives を arriving に変える
という通常の分詞構文の作り方です。
The bus starts at three and arrives in Tokyo at five. の分詞構文はもう一つ作り方があります。主節と副詞節という分け方をしないので、starts と arrives はどちらを~ing形にしてもよいのです。
なので
The bus starts at three, arriving in Tokyo at five.
Starting at three, the bus arrives in Tokyo at five.
のどちらでもかまいません。
一応、意味の軽いほうが分詞構文になるという傾向があるので、強調したいほうを主語 + 動詞の形で残しておくといいと思います。
「動作の連続」なので、先に起こる動詞を前に、後に起こる動詞を後ろにおくという点は変えないでください。この例文なら「出発する」の start が先、「到着する」の arrive が後なので、どちらを分詞構文にしようと、文中での前後の位置は入れ替えないということです。
次に否定語の扱いについてです。
分詞構文にしたい節に否定語の don't や didn't があれば、時制は気にすることなく not を動詞の~ing形の直前に置きます。
Because she didn't feel well, she didn't go to school.
「気分が良くなかったので、彼女は学校に行きませんでした」
なら
① 接続詞の Because を省略
② 主語は主節と副詞節で同じ she なので省略
③ didn't という否定語があるので Not とする
④ feel を feeling に変える
という手順で
Not feeling well, she didn't go to school.
という分詞構文ができます。